トト丸のブログ
医学知識の備忘録と、日常のおすすめ情報
ER

【論文ちょい読み】3ヶ月未満の乳児における軽症頭部外傷の評価

こんにちは!トト丸です!

今日は論文ちょい読みということで、個人的に読んで勉強した論文を備忘録的に書いていこうと思います。ちょい読みなのでAbstract(要旨)のみ、もしくは斜め読みなのでその点ご注意ください。

 

今回は乳児の軽症頭部外傷に関しての論文です。

小児頭部外傷の診断アルゴリズムと言えば2009年に発表されたアメリカのPECARN(pediatric emergency care applied research network)が有名です。(1)

PECARNは救急部を受診した42,412人の18歳以下の軽症頭部外傷(GCS≧14)を対象にした大規模観察研究です。この研究をもとに頭部CTを撮るかどうか判断している施設も多いのではないでしょうか。

日本小児神経外科学会でも「小児頭部外傷時のCT撮像基準の提言・指針」(2)の中で紹介しています。

アルゴリズムの図に関しては「PECARN 頭部外傷」と検索すれば沢山出てきますのでこちらでは割愛します。

 

Risk of Traumatic Brain Injuries in Infants Younger than 3 Months With Minor Blunt Head Trauma.Ann Emerg Med. 2021 Jun 17:S0196-0644(21)00298-5.

目的 Objective

軽症頭部外傷を受けた小児における、外傷性脳損傷の予測ツールは、生後3ヶ月未満の乳児では評価されていない。年齢別のPECARNの低リスク基準を満たした生後3ヶ月未満の乳児と、満たさなかった乳児において、臨床的に重要な外傷性脳損傷、CT上の外傷性脳損傷、および頭蓋骨骨折のリスクを明らかにする。

※臨床的に重要な脳損傷とは?

外傷性脳損傷による死亡、脳外科手術、24時間以上の挿管、2泊以上の入院が必要。

手術の不要なごく少量の頭蓋内出血や、1泊経過観察で済むような頭蓋骨骨折は含まれていないので注意!

 

方法 Methods

PECARNのデータベースの2次解析。

主要なアウトカムは

臨床的に重要な外傷性脳損傷、②CT上の外傷性脳損傷、③CT上の頭蓋骨骨折

 

結果 Results

2歳未満の10904人の患者のうち、3ヶ月未満でデータが揃っていたのは1081人(9.9%)だった。

ほとんどが転倒(750/1081人、69.6%)が受傷機転で、633/1081人(58.6%)がCTを受けた。

PECARNの低リスク基準を満たしたのは514/1081人(47.5%)。

アウトカムの発生率は

①1/514人(0.2%,95%CI 0.005%~1.1%)、

②10/197人(5.1%,95%CI 2.5~9.1%)、

③9/197人(4.6%,95%CI 2.1~8.5%)であった。

 

PECARNの低リスク基準を満たさなかったのは567/1081人(52.5%)。

アウトカムの発生率は

①24/567人(4.2%,95%CI 2.7~6.2%)、

②94/436人(21.3%,95%CI 17.6~25.5%)、

③122/436人(28.0%,95%CI 23.8~32.5%)であった。

 

結論 Conclusion

PECARNの低リスク基準は、3ヶ月未満の乳児においても臨床的に重要な外傷性脳損傷のリスクを正確に特定した。しかし臨床的に重要な外傷性脳損傷のリスクが低い乳児でも、CTを撮ると脳損傷があることも一定数あり、これらの乳児にはより慎重な判断が必要である。

 

コメント Comment

今までPECARNルールでは3ヶ月未満の乳児は“頭部CTを考慮するリスト”の1つに入っていました。今回の研究では3ヶ月未満の乳児にフォーカスを当てて2次解析をしていますが、やはり通常の低リスク群と比べて脳損傷の発生率は高い結果でしたね。ただ臨床的に重要な脳損傷と判定されたのは1人だったのは幸いな結果かもしれません。

どちらにしても乳児は症状の訴えがはっきりしないので、親御さんとよく相談して頭部CTの適応を慎重に判断する必要があることには変わりありませんね。

 

参考文献

(1)Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma: a prospective cohort study. Lancet. 2009 Oct 3;374(9696):1160-70.

(2)http://www.jspr-net.jp/information/pht_revised.pdf